生体試料(地衣類)を用いた脂質成分の分析から特徴的な化合物を検出し、その構造決定を行いました。これらの化合物は地衣類が共生する藻類(緑藻類)に起因する可能性があり、比較的新しい堆積物(例えば土壌や泥炭)における地衣類の寄与を示す有機分子指標(バイオマーカー)として使える可能性を示しました。
⇒ Ikeda et al. (2021, Phytochemistry), Ikeda et al. (2023, Organic Geochemistry)
図:地衣類から検出された化合物と分類群(Ikeda et al., 2021より)
図:白亜紀海洋無酸素事変時の陸上植生遷移(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/03/press20240304-03-Cretaceous.html より)
白亜紀に発生した海洋無酸素事変(OAE:Oceanic Anoxic Event )は火成活動の活発化に起因する大きな環境擾乱イベントでした。我々は北海道苫前地域に分布する白亜紀OAE2を記録している堆積岩を用いて陸上古植生の変動を復元しました。
結果として、海洋生態系に大きな影響を与えたCenomanian/Turonian境界期に発生したOAE2(9450万年前~9390万年前)ではアジア大陸東縁部において、陸上植生にも大きな影響を与えたことが明らかになりました。
⇒Takashima et al. (2024, Communications Earth & Environment)
生物を構成する脂質分子の中には分類群ごとに特徴的な炭素骨格をもつものが存在します。これらの一部は生物遺骸が分解・破壊された後も堆積岩に残存することがあります。
我々はこうした特徴的な有機分子が堆積物中でどのような変化を受け、またどの有機分子が分解を免れて堆積物中に保存されうるのかを室内実験と実際の堆積物を用いて調査し、地質時代の古生態系・進化史の解明に利用可能な分子化石の検討を行っています。